ギリシャ神話の最高神ゼウスには、たくさんの愛人たちがいることは有名なおはなしですよね。
そのお相手は、女神だったり、ニンフ(自然の精)だったり、はたまた人間だったり・・・。
そのまんまの姿で近づくと逃げられてしまう、ということがわかっているので、趣向を凝らして(?)いろいろなものに変身するゼウス・・・!
人間の女性であるイオには、なんと、黒い雲に変身した状態で戯れたという・・・汗
この記事では、そんなイオとゼウスの物語を、中世の名画と、ゼウスを象徴する木星の周りを回っている「ガリレオ衛星」と呼ばれる”木星のお月さま”をご紹介しながら、見ていきましょう。
※動画「てのひらの宇宙にまつわる星とギリシャ神話のおはなし〜木星丘編〜ゼウスと4人の愛人たち〜ゼウスとガリレオ衛星前編」の内容を以下の記事で詳しく説明しています。
木星とゼウスの関係
さて、みなさん、きっとご存知のこの星。

NASA
木星は、太陽系最大の惑星です。
直径には、地球が11個も並んでしまうほど大きいのですね。
そして、その守護神と言われるのが、ギリシャ神話の最高神ゼウスです。
木星には、その周りをぐるぐると回っている「衛星」という”取り巻き”がたくさんいるのですが、(2021年11月30日現在80個)
それと同じように、ゼウスの周りにも、取り巻き・・・愛人がいっぱいいるのですね。
なので、木星の衛星には、ゼウスの愛人たちや子孫の名前がつけられています。
4つのガリレオ衛星
その中でも有名なのが、この4つ。
.jpeg)
NASA
ガリレオガリレイさんによって最初に発見された、木星の4つのお月さまです。

ガリレオ・ガリレイ
この4つの衛星には、それぞれ、木星からの距離が近い順番に、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストという名前がつけられています。
そう!それはみんな、ゼウスが愛した存在たちの名前なのですね。
ひとこと
この4つの木星の月たちは、双眼鏡で見えるくらいの大きな衛星なので、ぜひ、機会があれば、天体望遠鏡や双眼鏡で木星を観察してみてください。
木星を取り巻いている姿が見えて、感動しちゃうと思います。
木星の月「イオ」
そのガリレオ衛星の中のひとつ、「イオ」。
-300x300.jpeg)
NASA
4つのガリレオ衛星の中で、一番木星に近いところを回っています。
イオが木星の周りを1周する時間は、なんと2日弱。
あんなに大きな木星なのに、わずか2日弱で1周するなんて、結構すごい速さですよね。
イオの表面が黄色だったりオレンジだったりするのは、イオの表面は硫黄で覆われているからで、イオには活火山が7つあることがわかっているのだそうです。
イオの物語
さて、そんなイオにまつわるギリシャ神話のイオの物語を見ていきましょう。
ゼウスに見初められたイオ
イオは、人間の女性。
ゼウスの奥さんであるヘラという女神に仕える女官でした。
ヘラは、とってもヤキモチやきで、ゼウスと近づくとヘラに何をされるかわからないので、みんな、ゼウスには捕まりたくありません。
ところが・・・
美しい人は、大変です。
ゼウスは、オリンポスの宮殿から下界をいつも見下ろしているのですから、見つかってしまうと逃げられないのです。
その日も、ゼウスはいつものように、下界を見下ろしていて、美しいイオを発見します。
でも、このままの格好では、気付かれて近づくことはできないし、奥さんのヘラにも見つかってしまう・・・
そこでゼウスは考えます。
う〜〜〜ん・・・
そうだ!
雲になろう!
ということで、黒い雲に変身したゼウスがイオと戯れるシーンを描いた名画がこちらです。
.jpeg)
コレッジョ作『ユピテルとイオ』1531年ごろ
みごとに化けちゃってますね。
こうして思いを遂げたゼウス・・・。
牝牛に変えられてしまうイオ
思いを遂げて はたと思い浮かぶのは、美しいけれども こわ〜いヘラの顔。
ヘラもまた、天から下界を見下ろしているわけですから、美女を目指して突然現れたあやしい黒い雲に、気付かないはずがありません。
そう思い当たったゼウスが、イオを牝牛に変えてしまった瞬間、案の定、ヘラがやってきました。
.jpeg)
ジョヴァンニ・アンブロージョ・フィジーノ作 1553-1608
なにやらゼウスは言い訳をしているようです。
いや、これは、とっても珍しい牛でね。・・・
あら、それなら、私にくださいな。
残念ながら、ヘラにはすべてがお見通しだったよう。
ヘラは、ゼウスから、牝牛になったイオを取り上げてしまうのです。
怪物アルゴスに監視されるイオ
さあ、ヤキモチやきのヘラさん。
二度とゼウスの元にやるものか、と、イオを、100の目を持つ怪物アルゴスに監視させます。
アルゴスは、イオを、オリーブの樹に繋いで、監視します。
アルゴスの100の目は、一度に2つずつしか眠らないので、イオは、逃げ出すことができません。
これを憐れんだゼウスは・・・
頼みの綱である、伝令ヘルメスに、アルゴスを退治するよう命じます。
ヘルメスによるアルゴス退治
ここはヘルメス、腕の見せどころ。
何をしても全部の目が眠ることがなかった、ヘラの従者アルゴスですが、ヘルメスの作戦にはかないません。
得意の葦笛を吹いてみたり・・・
物語を語ってみたり・・・
根気強くアルゴスに仕掛けていくヘルメス。
そうしてついに、うとうとと、アルゴスが眠り始めます。

Nikolay Andreyevich Koshelev 作 1840 – 1918年
完全に眠ってしまったところを、この剣でやっつける前にピースサイン。

Ubaldo Gandolfi 作 1770-1775年
ええと、なんで100の目を持つ怪物アルゴスが、ただのおじさんになっちゃっているのかは、氣にせず置いておきましょう。
イオのさらなる試練とその後
こうして、ヘルメスのおかげでアルゴスから逃れることができたイオですが
しつこいヘラは、さらにアブにイオを追いかけさせます。
イオは、まだ牝牛の姿のまま、アブから逃れるために、各地をさまよいます。
そして、エジプトでやっと、アブから逃れて人間に戻ることができました。
そうしてゼウスの子「エパポス」を生みます。
そのあと、イオは、エジプト王と結婚。
ゼウスとの子エパポスは、のちのエジプト王となります。
まとめ
ゼウスに見初められたがために、ゼウスの奥さんである女神ヘラに大変な目にあわされた、人間の娘イオ。
牝牛に変えられ、アブに追いかけられて、かわいそうでしたよね。
だけど、最後は、エジプト王と結婚してしあわせになり、息子もエジプト王となって、めでたし、めでたし。
ちょっとホッとします。
この物語で一番かわいそうなのは、100の目を持つ怪物アルゴスかもしれませんね。
ヘラの忠実な家来として、いろいろがんばったエピソードをたくさん持っているのに、ここで、あっさりとヘルメスにやられてしまうなんて。
ただヘラの言うことを聞いて忠実にがんばっていただけなんですけどね。
ヘラが、アルゴスの100の目を孔雀の羽根に飾ったのは、アルゴスへの愛の表現だったと思いたいところです。

ピーテル・パウル・ルーベンス作 1577-1640年
-
-
おうし座になったゼウスに見守られたエウロパ
続きを見る