木星の守護神ゼウス。
ゼウスの周りには、まるで木星をたくさんの衛星が取り囲んでいるように、ゼウスの愛した存在たちがいっぱいいました。
その中には少年も含まれていることをご存知でしょうか?
ガリレオ衛星にまつわるギリシャ神話のお話第3弾となるこの記事では、そのみずがめ座になったとされる美少年ガニメデとゼウスの物語を、中世の名画と、星座と、木星の周りを回っているガリレオ衛星のひとつ「ガニメデ」という木星のお月さまをご紹介しながら、見ていきましょう。
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○○になってイオに近づいたズルいゼウス!
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おうし座になったゼウスに見守られたエウロパ
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※動画「②ガニメデ*いかんよ、ゼウス…てのひらの宇宙にまつわる星とギリシャ神話のおはなし〜木星丘編〜ゼウスの4人の愛人たち後編」の内容を、以下の記事で詳しく説明していきます。
木星の月「ガニメデ」
木星の4つのガリレオ衛星のうちのひとつ「ガニメデ」。
ガニメデは、ガリレオ衛星の中で一番大きな衛星なのですが、それだけではなく、太陽系でもっとも大きな衛星です。
太陽系で1番大きなお月さま、ということになるのですね。
なんと、直径は、惑星である水星よりも大きいのです。
ギリシャ神話におけるガニメデは・・・
ゼウスに愛された、ガリレオ衛星に名前のつけられた存在たちの中で、唯一の男性(少年)なんですね。
ガニメデの物語
それではさっそく、そんなガニメデとゼウスのおはなしを見ていきましょう。
ガニメデの誘拐のいきさつ
ある日ゼウスは、いつものようにオリンポスの宮殿から、下界を見下ろしていました。
この時、ゼウスは、心さびしく、自分の給仕となってくれる存在を探していたのです。
さびしいなあ・・・
というのも、今まで神々の宴会でお酒を注いで回っていた、ゼウスとヘラの人気者の娘、へべが、ヘラクレスと結婚することになり、ゼウスにお酒を注いだり身の回りの世話をしてくれる人がいなくなってしまったからです。
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「酒壺を持つへべ」ディメター・ラカタリス 1830年頃
へべは、ゼウスと正妻ヘラとの子どもであり、火星のマルスと兄弟です。
そんな時、ゼウスの目にとまったのが、トロイア一の美少年と謳われた、トロス王の息子ガニメデでした。
ぜひともこの子を給仕にしたい♡
男なら、結婚してどこかへ行ってしまうことはないだろう♪
そう考えた寂しがりやのゼウスは、鷲になって、ガニメデを誘拐してしまったのです。

ウスタシュ・ル・スュール作 1644年
その後のこと
ガニメデの両親は、びっくりして、とても悲しんだのですが、数日後、2人の前に、羽根が生えた帽子をかぶり、羽根が生えたサンダルを履いたまばゆいばかりの若者が現れました。
そう、ゼウスの伝令ヘルメスです。
ヘルメスは、水星の守護神。
ヘルメスは、2人に伝えます。
心配は要りませんよ。
ガニメデは、ゼウスの元で可愛がられています。
そうはいっても、誘拐じゃないか!と思うのですが、
ギリシャ神話の中では、ゼウスは最高神。
最高神のご加護を受けることは、最高の喜びとされていたのですね。
2人の悲しみは、たちまち感謝と喜びへと変わったのでした。
そして、ゼウスにさらわれたガニメデは、永遠の命と若さを授かり、ゼウスの給仕となって、オリンポスでしあわせに暮らしたということです。

ベネデット・ジェンナーリ(孫)作 1633-1715年
みずがめ座のひみつ
そのガニメデの姿を、両親がいつでも見ることができるようにと、ゼウスが天に上げたとされるのが、「みずがめ座」です。
みずがめ座は、ガニメデが酒壺を持っている姿。
その酒壺から流れ出ている液体を、さかさまになった魚が受け止めているような配置で「みなみのうお座」が座しています。
まるで、ガニメデが注ぐネクタールと呼ばれる神酒で、魚が酔っ払っているようですよね。
この魚の口に当たる星は「フォーマルハウト」という星。
「秋のひとつぼし」とも呼ばれる星です。
「みずがめ座」も「みなみのうお座」も秋の星座なのですが、秋の星座には、明るく輝く星が、この「フォーマルハウト」しかないのです。
せっかくゼウスがよく見えるようにと天に上げてくれたのに、残念ながら探しにくいみずがめ座なのですが、この明るい「フォーマルハウト」を目印に、秋の夜空を探してみると良いかもしれません。
ひとこと
「みなみのうお座」は、お誕生星座の「うお座」とは違う星座です。
「うお座」の南側に位置するので「みなみのうお座」と名付けられました。