北極星「ポラリス」は、沈むことなく、私たちに北の方角を教えてくれる星。
そのポラリスは、こぐま座のしっぽに当たる星です。
そしてそのそばには、こぐまの母親であるおおぐま座が座しています。
有名な「北斗七星」は、おおぐま座の一部なんですね。
このふたつの星座は、ギリシャ神話の とある親子に関係しています。
ガリレオ衛星にまつわるギリシャ神話のお話の最終回となるこの記事では、そんなおおぐま座とこぐま座になったカリスト親子とゼウスの物語を、中世の名画と、星座と、木星の周りを回っているガリレオ衛星のひとつ「カリスト」という木星のお月さまをご紹介しながら、見ていきましょう。
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※動画「③カリスト*ゼウス、それ一番ダメやん…てのひらの宇宙にまつわる星とギリシャ神話のおはなし〜木星丘編〜ゼウスの4人の愛人たち後編」の内容を、以下の記事で詳しく説明していきます。
木星の月「カリスト」
ギリシャ神話の最高神ゼウスを守護神に持つ惑星である木星。
その周りには、ゼウスの愛人たちの名前がつけられた、たくさんの木星の月たちが回っています。
その中でも有名なのは、「ガリレオ衛星」と呼ばれる4つの月。
そのうちのひとつ「カリスト」。
カリストは、ガリレオ衛星の中では、ガニメデに次いで大きな星で、太陽系では3番目に大きなお月さまです。
カリストは、他の3つのガリレオ衛星とは少しちがう動きをしているのだそう。
これは、他の3つが象徴するゼウスの愛人たちが人間だったのに対して、カリストは「ニンフ」と呼ばれる自然の精霊であるということにリンクしているようで、なんとなく面白いです。
カリストの物語
さあ、そんな、ギリシャ神話の登場人物・・・いえ、登場ニンフ、カリストの物語をみていきましょう。
アルテミスに仕えるニンフ「カリスト」
カリストは、アルテミスに仕えるニンフでした。
ニンフとは、山や川や森などに宿る精霊のこと。
たいてい美しい女性の姿をしています。
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ウィリアム・アドルフ・ブグロー作「ニンフたち」(1878年)
その中でもカリストは大変美しく、アルテミスに最も可愛がられていたといいます。
そのアルテミスは、月の女神であり、狩猟の女神でもある、大変美しいながらもかなり厳格な処女神とされている女神です。
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ギヨーム・セイニャク「女狩人アルテミス」(19世紀)
アルテミスはいつも複数のニンフを従えているのですが、そのようなそばに仕えるニンフもまた、処女でなければならないのでした。
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ルイ・タヴィドゥー「森にあるニンフたちに囲まれたアルテミス」(19世紀頃)
カリストも、忠実にアルテミスに従い、男性には興味を持たず、アルテミスとともに、森の中を狩猟をしながら駆け回っていたのです。
ゼウスに見そめられる
そんな清廉潔癖なカリストを、ゼウスは見つけてしまいます。
なんて美しい女性なのだろう!
ギリシャ神話の理不尽な世界では、こうなると、もう、ゼウスから逃げることはできないのです。
彼女が男性を受け付けないことを知っているゼウスが思いついたのは・・・
なんと!
そうだ!
アルテミスになろう!
これは・・・
ずるい。
曲がりなりにも、アルテミスは自分の娘ですよ・・・。
かわいそうなカリスト・・・。
それは、最も信頼している主人アルテミスにやさしく抱かれたら、身を任せてしまうのも無理ないですよね。
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フランソワ・ブーシェ作 (1703-1770)
ハッと氣づいたときには、すでに遅し。
ゼウスの子どもを身篭ってしまうのです。
アルテミスに見つかる
掟を守ることができずに妊娠してしまった。
なんとか隠しながらも、いつアルテミスに見つかるか氣が氣でないカリストなのですが
ついにある日、アルテミスとともに沐浴をしなければならない時がやってきて、見つかってしまうのです。
アルテミスはたいそうご立腹・・・。

ピエトロ・リベリ作 1605-87年
なんと、カリストを熊に変えてしまいます。
熊に変えられてしまったカリスト
熊になったカリストは、森の中をさまよって、ある日、ひとりの男の子を産みます。
その子の名前はアルカス。
ギリシャ神話ではなぜか熊から人間の子どもが生まれてきたりするのですよね。
このアルカスは、ゼウスの愛人のひとり、マイアという女神に育てられて、立派な狩人となります。
マイアは、水星の守護神ヘルメスの母。
カリストとアルカスの再会
そうしてついにある日、カリストとアルカスが、森の中で出逢います。
生き別れた母と子の感動的な出逢いのはず・・・
なのですが、なんせ狩人と熊・・・。
悲しい宿命・・・。
自分が熊の姿であることも忘れて、我が子に駆け寄るカリストと
そうとは知らず、目の前に現れて向かってくる熊を、弓矢で射抜こうとするアルカス。
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Louis Chéron 作 1660-1725年
この様子をオリンポス宮殿から見ていたゼウスは、これはいけないと、急いでアルカスを小さな熊に変えて、2人を天に上げました。
これがおおぐま座とこぐま座だということです。
ということで、
慈悲深いような、そうではないような・・・ゼウスさん、それは一番ダメやん、なお話でした。
おおぐま座とこぐま座
私たちがよく知っている北斗七星は、このおおぐま座の一部なんですね。
柄杓の水を汲むところの一辺を5倍に伸ばしたところにあるのが北極星「ポラリス」。
北極星は、こぐまのしっぽの先なのですね。
北の空にあるおおぐま座とこぐま座は、1年中沈むことがありません。
それは、ゼウスの奥さんの女神ヘラが、ゼウスに愛された親子にヤキモチをやいて、2匹の熊を、1年中水浴びをすることができないようにしたからだと言われています。
ギリシャ神話の女神さんたちは、なかなか厳しいですね。
まとめ
というわけで、ガリレオ衛星にまつわるゼウスの愛人たちのおはなしを4回にわたって書いてきましたが、いかがでしたでしょうか!?
結局
- イオとの子エパポス→エジプト王に
- エウロパとの子3人→クレタ島の王、法律家、リキュア王に
- カリストとの子アルカス→アルカディア王に
と、ゼウスの愛人たちの生んだ子どもたちは、みんな王様になったり、立派な仕事に就いて世の中を動かしていくことになっています。
ということは、ゼウスの浮気も、子孫を繁栄させて、世の中を平和に治めていくためだった・・・
と考えると、少しは許してあげてもいいような、いけないような・・・
そんなゼウスとガリレオ衛星の物語でした。
おしまい。